大手サイトの標準的なスタイル - 横幅指定と大仰なナビゲーション -

横幅指定

最近どうにも私の中で、テーブルでしっかり 800 px に横幅指定されていないと大手企業のサイトに見えない、という感覚が現れ始めてきた。理想的なスタイル、つまりリキッド・レイアウトのサイトでは、ふとどのくらいの規模の企業か疑ってしまう。大変悪い傾向だ。
固定的なデザインでは、ユーザのあらゆる環境に対応しきれない。低解像度のデバイスでは横スクロールが出るし、広い画面領域を持つ PC では左右がまるでがら空きだ。さらに悪い事に、そういうデザインのサイトに限って文字サイズが固定されており、そして目を瞬かせるほど小さい。
Jakob Nielsen のこの言葉を思い出した。

60〜90%の大手サイトが、ある一定のやり方を採用しているなら、それは強い慣習と考えるべきだ。そして、ユーザビリティ測定で50%以上優れているという結果が得られない限りは、これと違ったデザインを採用してはならない。

統計を取ったことが無いのでわからないが大手企業サイトの現状を見る限りはおそらく、このランクにまでは横幅指定が来ていると思われる。たしかにそれは「強い慣習」と呼べるだろう。そこで問題となるのが、リキッド・レイアウトが「ユーザビリティ測定で50%以上優れていると証明できるか」どうかである。
私は確かに流動的なデザインのほうが優れていると信じているし、その裏付けもある。しかし依然として固定的なデザインは増えつづける一方。いくつかの Web デザイン指針の中には、「一行の文字数を x 文字に抑えるべきである」というのを見かける。
流動的なデザインを好む人はいる。だが一方で、固定的なデザインをより見やすいと判断する人もいることは確かだ。そしてそれは数にして、後者の方が多いのでは無いかという疑惑さえ抱き始めている。そうなれば少数派は妥協し、嫌ならユーザスタイルシートでも使いなさい。などと言わなくてはならなくなるのだろうか。
これ以上の拡大が食い止められないならばそれはデファクト・スタンダードとなり、我々もそれを採用せざるを得なくなってしまうかもしれない。

大仰なナビゲーション

企業サイトのもう一つの特徴として、「全てのページに割り当てられたグローバル・ナビゲーション領域」が挙げられる。私はグローバル・ナビゲーションが概ね嫌いだ。
大抵凝ったデザインをしているため表示に時間が掛かり、回線の細いマシンにとって致命的なレスポンスの低下に繋がる。貴重な画面領域を削り、本文と殆ど関連のないリンク群で埋め尽くされるのだ。またバナー広告と競い合うようにその存在を主張したがるので、まるで本文に集中できない。
一番肝心なところは、それらのリンククリックする確率が極めて少ないという点だ。
ユーザは派手なデザイン領域や、ある特定の位置(特に画面上端)に存在しつづける要素を無視する傾向がある。これは広告がもたらした功罪とも言えるだろう。凝りすぎたグローバル・ナビゲーションは、かえってユーザのためにならない。
よりシンプルなもの、つまり現在位置がわかり、あとは左右上方に対するリンクを用意するだけで充分だ。デザインにはわざわざユーザを惑わすような画像を用いずに、簡単なリストやパン屑ナビゲーションを用いると良いだろう。最後の手段として、自由に切り離せるフレームを用いるのも一つの手だ。
しかし残念ながら、グローバル・ナビゲーションも現在標準的なものとなりかけている。わざわざインデックスページに戻るという手間を煩わしく感じ、それを好む人もいるのだろう。確かにそういう人から見れば、グローバル・ナビゲーションが無いサイトは「ユーザビリティの低いサイト」に見えるだろう。
グローバル・ナビゲーションにも利点はある。つまり、どこへでも行けるという便利感だ。しかし行くべき選択肢が多いほど、より迷いやすいという傾向もある。
その辺りをよく検討した上で、導入を考えた方が良いのかもしれない。