同一性保持権について

ちょっと同一性保持権というのが気になったので調べてみた。
フレーム内に他人のリソースを表示する事が悪とされている、一番の要因のひとつである。果たしてこの行為に対して同一性保持権が適用されるかについては、甚だ疑問である。
それはともかくとして、勝手に自分のWebサイトにユーザスタイルシートをあてられて腹を立てるWeb管理人は、もしかしたらこの「同一性保持権」を主張しているのではないかという疑問が出てきた。確かにCSSによっては作成者の意図する表示を大幅に変更するものになるので、ある意味では同一性は保たれない。著作者の意図に反した改変と言えなくも無い。
「そんな馬鹿な話はあるか」と思われるかもしれないが、改造セーブデータの配布でさえ同一性保持権の侵害と判決されるのだから、検討の余地は十分ある。著作者の意図に反した著作物の扱いを推奨する行為として、ユーザスタイルシートの“配布”はそれと同等なのではないか。またOperaなどではデフォルトで大幅にスタイルを変更する機能を持っている。これは著作者の意図を尊重しないアプリケーションの配布ではないのか。
しかし色々調べていった結果、結論はNoである。単にユーザがスタイルを適用するのが自由なのは当然な事として、それらのブラウザが表示方式のみを変えたり、またユーザスタイルシートの配布は違法ではない。第二十条の後半で述べられた例外を見れば明らかである。


前項の規定は、次の各号のいずれかに該当する改変については、適用しない。
三 特定の電子計算機においては利用し得ないプログラムの著作物を当該電子計算機において利用し得るようにするため、又はプログラムの著作物を電子計算機においてより効果的に利用し得るようにするために必要な改変
つまりは、この“効果的に利用し得るようにするため”の改変に該当するだろうからだ。無意味にセンタリングされていたり文字サイズが10ptだったりするような“利用しにくい”著作物を“効果的に”得るための改変だ。
それに著作者は単に構造的にマークアップされた文書を配布しているだけであって、それをどのように解釈するかはユーザエージェントに一任されている。画像ファイルとして提示しているならいざ知らず、HTMLにおいてはそのレイアウト情報は守られるべき“同一性”に含まれない。
しかしそれならはフレーム内表示はどうなのか・・という疑問が一層強くなってきた。フレームは文書を“効果的に”利用するためにブラウザが提供した機能であり、文書自体を改変しているわけではない。それが自分の著作物ではない事が自明にされていれば、フレーム内表示も何ら問題はない、というのが今のところの私の考えである。